#-0 ご挨拶

ご無沙汰しております。
あれよあれよと、新しい偽島の登録がはじまり、錦上添花がゆっくりと消えていきます。
まるで香りがいつか消えてしまうように。

2年以上にわたる長い時間、錦上添花にお付き合い下さいました全ての皆様に感謝致します。
言葉ひとつのみならず、まなざしひとひらだけでも注いでくださったことは私と彼にとって望外の喜びでした。
彼にまつわるたくさんの物語を偽島の中で表現仕切れなかったことだけが今ただ刺となっています。

「いつか自分だけの王子様が迎えに来てくれるのを待っている」女の子。このよく使われる形容を引っ繰り返して生まれたのが添花でした。
だったら。だったら、その王子様は、今もたったひとりの自分だけのおひめさまを探しているんじゃないか、と。
添花のおひめさまを探すたびはまだまだ続きます。それこそ、永遠に等しい時間の中で。
ので、彼の物語を語ることは致しません。島から島へ、物語から物語へと彼は、たったひとりの女性を探し続けていくからです。
ただ、わたしの手元に残る、幾つもの香りの欠片だけがどこにも昇華されず、空に満ちることがない、ということだけが悲しいばかりです。


明日からの、新しい50日。
今度は、今再び……新たな渇望を抱えたひとりの「観客を知らない」踊り手の物語となります。
余りに小さな島ですが、袖の触れ合うときにはどうぞ足を止めていただけますでしょうか。
そして彼女の舞がお気に召すようでしたら、彼女に少しばかりの拍手を。







ちいさなちいさな島に居た、ひとりの香りに満ちた騎士を思い出すときには、その軌跡を辿っていただければ幸いです。
また皆さまにお目にかかれるときを楽しみにしております。

――どうか幾つもの次元に満ちるたくさんの、おうじさまとおひめさまの手に幸福の青いリボンがくるくると絡まりますように。