Day.2 |
06/05-06:52-COM(0)-TB(0)-記憶 |
簡素に纏められた荷物が置いてある
他の遺跡探索者たちと比べるとやや小ぶりな以外は特に目を引くようなものは何も無い
荷物の主の姿は見えない
ここで、この荷物の主人を考えてみよう
荷物の小ささは男性の専売特許だが――というか女性の荷物は概して大きいものだが――この場所に限ってはそうも言えまい
視線を起こして辺りを見回せば、自分の体よりも大きな荷物を背負って歩く女性の姿などさして珍しくも無いだろう
(それと同時に、遺跡に潜るような格好ではない人々の姿もよく見かけることだろう)
(そしてそれにもやはり性別は関係ないように映る)
荷物の上に乱雑に置かれているのは赤の手帳と細い紐で纏められた手紙の山だ
それに注意を払ってみれば、その手紙の宛先はどれも同じものであることや消印が押されていないことに気づくだろう
文字の筆跡はどれも同じだが、書かれている言葉は微妙に異なっている
見慣れぬ者、その言語を用いないものには気づかない程度の微妙な言語差だが、その多くはどうやら音楽と太陽の国の言語のようだ
それに時々、情熱と血の国や芸術とワインの国の言葉が混じるように見受けられる
女性の文字にしては鋭く、男性にしては流麗な文字
宛先の名前は「アリス」……それにつけられる冠詞だけがどの宛先でも変わらない
「愛する、私の」――アリス。
荷物の主人の気配は未だしないようだ
手帳を取り上げてみよう
上質な赤……というよりかは緋色の皮の手帳に金属の薄いマーカーが差し込まれている
手帳の筆跡は、手紙の宛名を――山ほどの出されなかった手紙を書いたものと同じである
ページを繰ると途中で今までの大陸の端で用いられていた――格式ある古典言語の一端から東国の象形文字へと移り変わっていく
筆跡も異なりどうやら女の文字のようだ
流麗に縦に流れるように記されていき、その隣に時々やはり恐らくは“彼”が用いる言語で注釈がつけられてある
“彼”と“彼女”の両の言語を解するものがそれを見ればその書かれた内容は、古い物語の写し及び会話の書き取りということに気づくかもしれない
一箇所、小さく紅で印をつけられている箇所がある
曰く
“錦上添花色更鮮”
目も眩むような甘い香りが立ち上った
他の遺跡探索者たちと比べるとやや小ぶりな以外は特に目を引くようなものは何も無い
荷物の主の姿は見えない
ここで、この荷物の主人を考えてみよう
荷物の小ささは男性の専売特許だが――というか女性の荷物は概して大きいものだが――この場所に限ってはそうも言えまい
視線を起こして辺りを見回せば、自分の体よりも大きな荷物を背負って歩く女性の姿などさして珍しくも無いだろう
(それと同時に、遺跡に潜るような格好ではない人々の姿もよく見かけることだろう)
(そしてそれにもやはり性別は関係ないように映る)
荷物の上に乱雑に置かれているのは赤の手帳と細い紐で纏められた手紙の山だ
それに注意を払ってみれば、その手紙の宛先はどれも同じものであることや消印が押されていないことに気づくだろう
文字の筆跡はどれも同じだが、書かれている言葉は微妙に異なっている
見慣れぬ者、その言語を用いないものには気づかない程度の微妙な言語差だが、その多くはどうやら音楽と太陽の国の言語のようだ
それに時々、情熱と血の国や芸術とワインの国の言葉が混じるように見受けられる
女性の文字にしては鋭く、男性にしては流麗な文字
宛先の名前は「アリス」……それにつけられる冠詞だけがどの宛先でも変わらない
「愛する、私の」――アリス。
荷物の主人の気配は未だしないようだ
手帳を取り上げてみよう
上質な赤……というよりかは緋色の皮の手帳に金属の薄いマーカーが差し込まれている
手帳の筆跡は、手紙の宛名を――山ほどの出されなかった手紙を書いたものと同じである
ページを繰ると途中で今までの大陸の端で用いられていた――格式ある古典言語の一端から東国の象形文字へと移り変わっていく
筆跡も異なりどうやら女の文字のようだ
流麗に縦に流れるように記されていき、その隣に時々やはり恐らくは“彼”が用いる言語で注釈がつけられてある
“彼”と“彼女”の両の言語を解するものがそれを見ればその書かれた内容は、古い物語の写し及び会話の書き取りということに気づくかもしれない
一箇所、小さく紅で印をつけられている箇所がある
曰く
“錦上添花色更鮮”
目も眩むような甘い香りが立ち上った
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