#-0 ご挨拶

ご無沙汰しております。
あれよあれよと、新しい偽島の登録がはじまり、錦上添花がゆっくりと消えていきます。
まるで香りがいつか消えてしまうように。

2年以上にわたる長い時間、錦上添花にお付き合い下さいました全ての皆様に感謝致します。
言葉ひとつのみならず、まなざしひとひらだけでも注いでくださったことは私と彼にとって望外の喜びでした。
彼にまつわるたくさんの物語を偽島の中で表現仕切れなかったことだけが今ただ刺となっています。

「いつか自分だけの王子様が迎えに来てくれるのを待っている」女の子。このよく使われる形容を引っ繰り返して生まれたのが添花でした。
だったら。だったら、その王子様は、今もたったひとりの自分だけのおひめさまを探しているんじゃないか、と。
添花のおひめさまを探すたびはまだまだ続きます。それこそ、永遠に等しい時間の中で。
ので、彼の物語を語ることは致しません。島から島へ、物語から物語へと彼は、たったひとりの女性を探し続けていくからです。
ただ、わたしの手元に残る、幾つもの香りの欠片だけがどこにも昇華されず、空に満ちることがない、ということだけが悲しいばかりです。


明日からの、新しい50日。
今度は、今再び……新たな渇望を抱えたひとりの「観客を知らない」踊り手の物語となります。
余りに小さな島ですが、袖の触れ合うときにはどうぞ足を止めていただけますでしょうか。
そして彼女の舞がお気に召すようでしたら、彼女に少しばかりの拍手を。







ちいさなちいさな島に居た、ひとりの香りに満ちた騎士を思い出すときには、その軌跡を辿っていただければ幸いです。
また皆さまにお目にかかれるときを楽しみにしております。

――どうか幾つもの次元に満ちるたくさんの、おうじさまとおひめさまの手に幸福の青いリボンがくるくると絡まりますように。

500

マンダリンリーフの光が弾け
コリアンダーの風が吹く
それは貴方を視界に捉えた瞬間の輝かしい魔法
触れた柔らかな毛ざわりがナツメグと姿を変えて
ジュニパーで織り上げた貴方への手紙に滑り込むあまやかなゼラニウム
どこまでもあたたかな貴方の足跡はシダーウッドの森
胸の寂寥をジュニパーが埋めて
零れた涙から生まれる緑、新しい命

シゼットno.055“金の紙飛行機”

大地の愛を享受する　牛の子供へ



*immagini colore:■caramel
*immagini scena:真昼の大地

*concetto:温もり/母なる大地/命のめぐり/手紙/伝導/森/呼吸/

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449

貴女の世界は炎の中心のようにとても遠い
騒がしい夜にぽっかりと浮かんだローズウッドの月
くすくす笑う白檀の影絵を踏み、ジャスミンで縁取られた穴へと落ちる
光と影が交互に揺れるムスクの大地の中
眩暈に満ちたピオニーの花畑の海を泳いで
辿り着いた岸辺はきっと那由多の中心
星座の海に咲く東洋蘭　禁じられた至高

リデルno.019“Taleju”

夜の隙間の炎の影　甘苦い影絵人形師に



*colore:■burnt umber
*scena:炎が切り取る絶対の夜の領域

*concetto:深遠/夜/御伽噺/影絵/逆さの大地/クマリ/星座図/かがり火/

270

その身を赤く染め抜いた
スイートピーにワイルドベリー
ゼラニウム、ピオニー、フリージア
貴女が寂しく無いように
その混沌の紅は貴女に寄り添う
マグノリアが舞い散るその王国に咲く
ただただ目眩く薔薇の棺
それは誰もが切に望み願った絢爛の春

リデルno.012“Lucifer”

（あの赤く光る星はきっと貴女の最期の煌き）



*colore:■ruby red
*scena:----------

*concetto:紅が敷き詰められた棺で貴女は眠る

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567

誰もが貴女の影を知っている
例えば野に咲くスミレの葉
ホワイトムスクが育んで
はらはらと流れたバラの花びら
朝露のミュゲ　陽光のグリーンティ
マリーゴールドのたくらみごとの陰で
ガーデニアは睦事を交わす
恋人たちにそっとささやく　幸福を振りまくあなた

ラークno.013“デルフィニウム”

願いをその身に宿す　花の精霊に



*colore:■baby pink
*scena:春の散歩道

*concetto:白/ささやき/小さきもの/さりげなく/暖か/悪戯/願い/かげ/